開眼21 ガラ・コンサート
2001年開催の「開眼21 ガラ・コンサート」のためにオリジナル委嘱作品として以下を作曲いただきました。共通するモチーフは「開眼(かいげん)」です。
KAIGEN21
解説:(初演パンフレットより)
序曲 「KAIGEN21」 作曲:宮川彬良
全体は3つの主題からなる作品です。最初の主題は、凛とした空気の中にすがすがしい朝陽が昇り、すべての事物の始まりを予感させるイメージです。やがて躍動的な営みが感じられる旋律が登場し第2の主題を導きます。この主題は印象深い美しいピアノの旋律から始まります。徐々に大きな波となり「力強い決意」とともに壮大な大海原に船出するような場面へとつづき、最初の主題である夜明けのイメージが再提示されます。
その後、大きな転換が用意され第3の主題へとつながってゆきます。
第3の主題はポロネーズの形式をとっています。「躍動感」、「強い連帯感」を連想させる明快なリズムとともに進化、発展してゆく展開となっています。 エンディングは各主題を再現しながら、簡潔な組み立てで構成されています。それぞれの主題を振り返り、作品全体の余韻を残すための作曲者の工夫が感じ取れます。
※現在も宮川彬良さんのコンサートで演奏されており、吹奏楽版も出ています。
宮川 彬良
東京藝術大学在学中に劇団四季や東京ディズニーランドなどのショーの音楽でデビュー。現在は作編曲の他、『コンサートはショーである』を信条に演奏活動を行っている。代表作「マツケンサンバⅡ」「クインテット」「ひよっこ」など多数。
開眼21
解説:(初演パンフレットより)
交響詩 「開眼21」 作曲:井上道義
この作品の紹介として、作曲者の言葉をお借ります。(以下「 」内は曲者談)
「田中英成社長に、書きたい物があれば書いてくれと突然委嘱され、心から喜んでかなりの集中力で書き上げたものです。その頃は海外の演奏が多かった時代からの移行期で京響でも東京でも殆どの人々と考え方が合わず苦しい時期でした。でも何より自分自身の出生問題の発見でそれまで見えていたもの全てが揺れ動いていた時期でもありました。お話のあった数年前、京都金閣寺での{音舞台}ではじめて作曲を行ない、自分も作曲が出来るかも知れない!と希望を僅かに持っていたのも幸いしました。{開眼21}というのは田中さんがつけられた名前ですが、井上自身は{鏡の眼}という曲名を与えていました。どちらにしても、人は自分の姿を自分でも捉えることは簡単ではなく、実存する姿でさえも、鏡で見て捉えた気持ちになっているくらいでしょう。クラシックの演奏も作曲されたものをその作曲者の身になって演奏しますが、「作曲をする」というのは楽譜ゼロから音を作り上げる、まるで今までの逆さま・・・鏡の側からこちらを見るような行為です。真剣に作曲を学んでこなかった自分にはかけがえのない新たな開眼となった作品です。亡くなっていた父の烈しい醜悪な酩酊の毎日を黒田節に引っかけ笑い飛ばそうともしています。同時に彼によって与えられた素晴らしい思い出に満ちた幼年期少年期を音楽に昇華させ、音楽を生涯の友と選んだ自分を肯定しようと試みた作品で、今思えばこれ以降の井上を支えてくれた出来事でした。
井上 道義
桐朋学国大学にて齋藤秀雄氏に師事、1971年ミラノ・スカラ座主催グィド・カンテルリ指揮者コンクールに優勝。1990年から1998年まで京都市交響楽団の音楽監督常・任指揮者を務める。