オルソケラトロジー2023年8月28日

オルソケラトロジー導入後のお困りごと - 視力が出ない?

前回は「保護者」や「スタッフ」といったコーチが寄り添って、「ご本人」がオルソケラトロジーのスタートラインに立てるようになるまでをご紹介しました。今回はいよいよスタートを切った選手を見守るような監督の視点に立って考えてみたいと思います。

視力が出ない?

実際にオルソケラトロジーを始めると、順調な経過をたどる方もいれば、思うような効果がなかなか出てこないという方もいらっしゃいます。

中でも視力に関するご相談は非常に多く、その解決法も多岐にわたりますが、ここではできるだけシンプルにお話しをさせていただきます。

視力が出にくい場合、主に以下のような状況が考えられます。

1. レンズのセンタリングは良好なのに、視力が出ない?

2. レンズのセンタリングが不良だから、視力が出ない?

※他にもありますが、ここでは割愛させていただきます。

本コラムでは、「1. レンズのセンタリングは良好なのに、視力が出ない?」 についてご紹介します。

レンズのセンタリングは良好なのに…

オルソケラトロジーに必要な睡眠時間は、最低6時間以上といわれています。

睡眠時間が不足していたり、不規則だったりした場合は効果が出にくいため、まずは「十分且つ規則正しい睡眠時間を確保すること」が前提です。

開始から1週間以上経過しても、下図のような赤いリングが現れてこないようでしたら、「毎日、何時間くらい寝ている?」とご本人や保護者の方に十分な睡眠時間がとれているか確認いただくとよいでしょう。

 ※サンプル

また、若年層の場合、近視は短期間で進むケースがあります。このような場合、最初に合わせた『目標とする矯正度数(Target Power:TP)』では視力が出にくいことがありますので、「不足分のTPを追加する」ことで解決することが多いようです。もちろん、ガイドライン(原則:-4.00Dまで)に沿うことが必要です。

※その他、眼鏡と併用するなどの方法もあります。

さらに、角膜がフラットな場合(参考目安:42D未満)、効果が出るまでに時間がかかることもあります。オルソケラトロジーではレンズを角膜に乗せて、角膜前面を平坦化していきますが、もともと角膜がフラットであるがゆえに、上皮層の形状変化(上皮細胞の再分配)にも、より多くの時間がかかる傾向が見られます。したがって、このような場合「しばらく様子を見る」ことも必要です。

以上を振り返ってみると、オルソケラトロジーでは一般的なコンタクトレンズ(※以下、通常レンズ)と比べて長期視点で見守る場面が多いといえます。

オルソケラトロジーは大仏様!?

通常レンズは『視力補正用コンタクトレンズ』と位置づけられているように、日中、角膜にレンズを乗せた状態で視力を補正するレンズですので、装用中は常に角膜上で動き回っています。一方、オルソケラトロジーレンズは『角膜矯正用コンタクトレンズ』と位置づけられ、就寝中のレンズ装用によって角膜形状を矯正させていくレンズです。そのため、装用中は角膜の上で動かずにじっとしています。さながら静かに鎮座している大仏様といったイメージでしょうか。角膜の上にしっかりと腰を落ちつけて座っているからこそ、角膜形状もそれに沿って矯正されていき、翌朝レンズを外した時は裸眼でモノが見えるという仕組みです。このように各々のレンズには対照的な違いが見られますが、最終的には視力の矯正という共通点があります。

ズレているのに見えている?

保護者におかれてはオルソケラトロジーに近視進行抑制効果を期待する一方、何よりも装用者自身の見える喜びという原点に立てば、やはり「ご本人がその見え方に満足しているかどうか」が大きなポイントといえるでしょう。

まれに、肝心のご本人の認識や気持ちがおき去りにされてしまい、周りの大人たちの考えが優先・先行する場面が見られることがありますが、実際にレンズを装用するのはご本人ですので、その意思を丁寧に確認しながら進めていきたいものです。

本来はレンズのセンタリングも視力も良好であるのがベストですが、中には「センタリングが少しズレているのに視力は出ており、ご本人もその見え方に満足している」というケースも見られます。このような場合、通常レンズと同じようなフィッティングに過度にこだわってしまうと、何度もレンズ交換を繰り返して、逆効果となりかねません。したがって、「センタリングがわずかにズレていても、異常所見が見られず、ご本人がその見え方に満足していれば、引き続き慎重に経過観察」というスタンスが有効な場合もあるようです。

※視力不良に関連して眼軸長の測定も重要な検査ですが、別の機会にゆずりたいと思います。

やっぱりセンタリングは大事

とはいえ「やっぱりセンタリングがズレているのを何とかしたい!」というお考えはごもっともです。「センタリングが良好だからこそ、視力もきちんと出ている」状態を理想とすれば、少しでもそれに近づけたいというのが自然な考え方です。そこで次回は、「②レンズのセンタリングが不良だから、視力が出ない?」という点について考えてみたいと思います。

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