前回は「オルソケラトロジー導入の前に知っておきたいこと」についてご紹介いたしました。
今回は、子どもにオルソケラトロジー(以下オルソ)を導入する際の具体的なステップ、特に使用いただく際のお困りごとについてご説明いたします。
オルソケラトロジーガイドライン(第2版・平成29年12月10日発行)」では「20歳未満は慎重処方とする」としています。
20歳未満のなかでも、小学生と大学生とでは異物(コンタクト)に対する耐性、理解力、ものごとを処理する手ぎわなどに差があります。
特に、小学校低学年くらいの子どもがケアや管理のすべてを適切に行うことは難しいため、オルソを導入するためには保護者の協力は必須といえます。
一方、保護者が子どもにオルソを使用させたくても、本人が嫌がっている場合があります。
本人が嫌がることを強制するのは決して望ましいとはいえませんし、思うようにいかない結果に終わることが多いようです。
保護者だけでなく、子ども本人にも納得してもらうことがオルソ成功の第一歩。
オルソの目的や特徴を伝えることはもちろん、レンズケアや定期検査の重要性についても理解してもらうことが大切です。
オルソでは、事前に適性があるかどうかを判断するためのスクリーニング(適応検査)が必要です。
検査前は以下のポイントに気をつけておくと、スムーズに検査に臨むことができるでしょう。
はじめてトライアルレンズを目にいれることは、子どもにとっては恐怖に近い感覚でしょう。
そういう時こそ、保護者が子どもに声をかけてあげると、上手くいくことが多いようです。
精神的なよりどころがあると、人は前向きになれるということでしょうか。
トライアルレンズを装着する時の顔の位置ですが、45度くらい(うつむき加減)を目安にしましょう。
装着薬がこぼれにくく、子どもにとってもあまり無理を感じない姿勢です。
一方、正面視で目線だけ足下に向けてもらう場合は、レンズを直視しないので恐怖心が軽減されますが、装着薬がこぼれやすくなりますので注意が必要です。
そして大事なことは、レンズが入ったら静かに眼をとじて、そのままじっとしてもらうという点です。
通常のコンタクトレンズのように瞬目をくり返すと異物感が増してしまいますし、そもそもオルソは眼をとじた状態で使うものですから、就寝中に近い状態の方がその場でも効果が現れやすくなります。
無事に検査を終えても、装用練習の段階でつまずいてしまう子どももいます。
何度レンズを入れようとしても、無意識のうちに眼をとじてしまうのです。
スタッフが熱心にコツを教えてあげるのですが、「眼」がいうことをきいてくれない。
万が一、施設の装用練習でうまくいかなかった場合でも、自宅でのイメージトレーニングで成功するケースがあるようです。
自宅で保護者と一緒に取扱説明書をよく読み、鏡を見ながら何度もイメージトレーニングをした結果、再来時はスムーズに装用することができた方もいらっしゃるようです。
本人のやる気に加え、スタッフの献身的な姿勢と保護者の気持ちが後押しとなり、成功したといえそうです。
レンズの着脱ができるようになったら、これからは自分で……といきたいところですが、特に低年齢の子どもにとっては、レンズのケアや管理は難しいため、まだまだ保護者の協力は欠かせません。
オルソのレンズはその効果を出すために特殊な形状をしていますので、汚れがつきやすく、放置していると感染症などをひき起こす原因を作ってしまいます。
最初は保護者がレンズケアをしっかりとおこなって手本を示し、子ども自身が管理できる時期を見計らってから、徐々に移行していくとよいと思います。
前回のコラムでも触れたように、オルソは長期にわたってその効果を診断していく必要がありますので、定期検査が重要です。
オルソを安全に使っていただくには、ドクターやスタッフの監督・指導だけではなく、保護者の理解と協力を得ることが必須といえるでしょう。