コラムカテゴリー2026年5月8日

眼科医療の現場で押さえておきたい!保険診療と自由診療 - 基礎と実務のポイント

眼科診療には、「保険診療」を中心に行う施設もあれば、「自由診療」を併せて提供する施設もあります。それぞれの制度には特徴があり、提供できる医療内容、説明の義務、会計処理、広告規制など、実務面にも違いが生じます。本コラムでは、保険診療と自由診療について、眼科医療の現場で押さえておきたい制度と実務のポイントをまとめています。

保険診療とは

保険診療は、国民健康保険法・健康保険法に基づき、公的医療保険の対象として認められた診療行為を指します。国民健康保険や健康保険に加入していれば、初診・再診・検査・画像診断・処置・手術など、一般的な眼科診療の多くが保険適用となり、患者様は原則1〜3割負担で受診できます。また、診療報酬は診療報酬点数表に基づいて算出されており、この仕組みが「公平な医療提供」を支える保険制度の根幹となっています。

自由診療とは

自由診療は、公的医療保険の対象外となる診療で、医療機関が料金設定や治療内容を自主的に決める診療形態です。保険診療では認められていない新しい治療法や、患者様の希望に応じた選択肢を提供できる一方、治療費は全額患者様の自己負担となります。

眼科では主にレーザー白内障手術、レーザー飛蚊症治療、屈折矯正手術(LASIK/ICLなど)治療、近視進行抑制関連治療、美容目的の処置が自由診療の対象です。国内未承認の医薬品や機器を自由診療で使用することもありますが、医師の責任や輸入手続き、リスクの説明が必須となるため、適切な対応が求められます。

保険診療と自由診療を併用する際の注意点

保険診療と自由診療を併用することを「混合診療」と呼び、原則として、同じ疾患や同じ治療計画のなかで保険と自費を混在させることはできません。

1. 原則禁止の例
・近視進行抑制治療(自費)を行っている同一の治療計画の中で、保険の追加検査や治療を組み合わせる
・白内障手術において、保険の検査と自費の検査を同一の術前評価の中で併用する

2. 例外的に認められる制度
保険外併用療養費制度に基づき、以下は併用が可能です。
・選定療養(多焦点眼内レンズなど)
・評価療養(保険収載前の一定の治療)
・患者申出療養

3. 別疾患であれば同日併用可能
カルテ・処方箋・診療明細書を明確に分けることで、同日に保険診療・自由診療を併用することができます。疾患区分を明確に区分・記載することが実務上の重要ポイントです。

別疾患で同日併用可能な例 オルソケラトロジー管理(自由診療)とアレルギー性結膜炎の点眼処方(保険診療)

自由診療を取り入れる際の注意点

1. 患者様への説明と同意
自由診療では「説明不足=トラブル」につながる恐れがあります。保険診療との違い、どこからが自由診療となるか、費用の根拠、効果の限界・リスク、保険診療を含む他の選択肢等についても説明する必要があります。医師とスタッフの説明に差異があると不信感につながるため、院内で説明内容を統一することが必要です。

2. 医療広告ガイドラインの遵守
自由診療を行う医療機関のホームページに掲載された情報がきっかけとなりトラブルが生じるケースもあるため、厚生労働省は医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針を定めています。自由診療に関する情報は、医療広告ガイドラインの対象となり、掲載できる内容があらかじめ決められています。ただし、次に示す「限定解除要件」を満たせば、ガイドラインで定められた項目以外の情報も掲載することができます。

【限定解除要件】
① 患者様が自ら求めて閲覧するウェブサイトであること(バナー広告等は不可)
② 問い合わせ先を明示し、容易に照会できること
③ 自由診療に必要な治療内容・標準的な費用に関する情報を提供すること
④ 自由診療に関する主なリスク・副作用等について情報提供すること

自由診療を取り入れる経営 メリット 診療報酬改定の影響を受けにくく、収益が安定しやすい 専門性を打ち出しやすく、ブランド形成につながる 地域での差別化が可能になり、選ばれる理由をつくりやすい 満足度の高い患者様からの口コミ・紹介が増えやすい デメリット(注意点) 混合診療のルールを誤ると指導・監査リスクが高くなる カウンセリング・説明時間が増えることで業務負荷が高まる場合がある 初期投資が必要になるケースがある 自費治療に対する患者様の期待値が高く、満足度のコントロールが難しいことがある

まとめ

保険診療と自由診療は、費用負担の違いだけでなく、提供できる医療内容・説明義務・会計処理・広告規制など多面的に異なります。特に眼科は自由診療が比較的多い領域であるため、制度理解と実務判断が医療安全と患者様満足度の双方に直結します。眼科医療に携わる皆様が制度や規制、医療安全の視点をふまえて保険診療と自由診療を適切に使い分けることで、患者様と医療機関双方にとって、より良い医療の選択肢の提供につながります。

参考:医療広告ガイドライン(厚生労働省)別ウィンドウで開く