中国の人口は2023年時点で約14億人と、日本の約10倍以上に達しますが、コンタクトレンズ市場規模は日本市場よりやや大きい程度に留まっています。人口規模を考えると、コンタクトレンズ装用者の割合はまだ低いといえるでしょう。
中国市場では、ディスポーザブルレンズとコンベンショナルレンズのシェアがほぼ半々です。特に注目すべき点は、コンベンショナルレンズのうち約9割がオルソケラトロジーレンズであることです。日本ではオルソケラトロジーレンズの処方は原則20歳以上で、学童への処方は「慎重処方」とされていますが、中国では近視進行抑制を目的として主に学童期の子どもに処方されています。
近年、中国では青少年の近視増加が社会問題化しており、2018年には政府が「児童・青少年の近視の総合的な予防・管理に関する実施計画」を発表しました。この計画では、屋外活動時間の増加や宿題量の削減、正しい姿勢の推奨などが掲げられています。この背景から、中国ではオルソケラトロジーレンズをはじめ、多焦点ソフトコンタクトレンズ、低濃度アトロピン点眼、特殊眼鏡レンズなど、多様な近視進行抑制治療がおこなわれています。
オルソケラトロジーは中国で普及してから10年以上が経過し、その安全性や有効性に関する臨床報告が多く発表されてきました。このため、現地の眼科医や消費者からは効果的な治療法として広く認識されています。また、日中にメガネやコンタクトレンズを装用する必要がなく、学校生活での破損や紛失のリスクが少ないことから、学童期の近視進行抑制治療の主流となっています。
ディスポーザブルレンズはすでにインターネット購入が過半を占める一方、オルソケラトロジーレンズは医療機関において眼科医による処方を受ける事が必須です。オルソケラトロジーレンズの価格は両眼で6千~1万元(約12~20万円)と高額ですが、学校の休暇時期には処方施設に子どもと保護者の行列が見られるほどの需要があります。
近視人口が多い中国で、今後どのようにコンタクトレンズ市場が拡大し、ニーズが進化していくのか注目されます。